セイリログ

こう、ぼんぼりたい

『劇場版 花咲くいろは HOME SWEET HOME』 雑感

TVシリーズをそもそも見てなかったので先週全巻借りて4日くらいで見ました。

それがやっぱり大変面白かったです。久々に良いアニメ見られたので、今期のアニメを幾つかみて画面壊しそうになりました。そのことについてはまあ後々。

 

もちろんこの26話のTVシリーズについて触れられる箇所は多くあると思うが、いやでも『夢中になれた』『仲居を見る目が変わるね』『ぼんぼり祭り行ってくる』といった一言で、自分の中では完結しても構わないつもりでした。

でも西村純二さん担当回の、ねっとりとしたあの感覚は特筆すべきもので、あれは誰か詳しく言及したほうが良いんじゃないですかね。してるかな。

 

それで締めくくりとなる、劇場版。

ただこれは締めくくりであっても完結編ではありません。そして映画でもない。安藤監督自身も、そういったニュアンスで答えている。ファンムービーなんです。時系列的にも、TVシリーズの終盤に位置するエピソードで、補完でも続編でもなく、70分の中編ワンエピソードの趣が強い。

なので、どうしても話題性に欠けてしまう面があるのが寂しいところですが、形態としては問題あるわけではありません。寧ろこの形式で作られた、この劇場版がファンに対しての最高の形であったとも思います。けいおんの劇場版より正直好きだったり。

 

前置きはそんな感じで、中身いきます。 

 

泣きました。緒花が号泣するとこで泣きました、フィルムに気持ちが乗っている素晴らしいシーンだと思います。

しかし、この劇場版では、何か一つ、物足りないというか、モヤモヤとした気持ちが残ってしまいます。それは作品としての完成度といった話ではなく、このアニメの持つ構造、テーマが起因するもののはずです。

特にそれを感じたのは、ラストですね。『走る』シーンです。

 

『走る』というのは、この作品のキーワードになっていて、今作もその動作は重要な意味を持っています。気持ちを身体を通して放出させる、開放感というか、ニュアンス的にはそういったものだと思います。

緒花達が、必死に走って、その先に輝ける場所があるのか、別に疑心暗鬼になっているわけでもないんです。TVラストを見れば、緒花はもちろんあのTVキャラクター達は輝く方向に進んでいくのは確信できるもんでしょう。

 

ただ、これ視聴している身としては一緒に走れないんですよね。でも俺は一緒に走りたかったんです。好きだから。

 

これがよく分からず、インタビュー目当てでパンフレット買ったんです。『走る』ことについては岡田麿里さんの言及があり、得心できるものでした。

少し引用します。

 

ーー緒花達は、どこに行こうとしているのか分からないけど、確実に「どこかを目指しているんだな」って言うのが分かるんです。(中略)「名前のついた感情を抱いて、まっすぐ走る」感じ……と言えばいいのかな。

 

作中的に言うと、やはり「ぼんぼる」ってことで、行き着く先は「輝ける場所、時」なんすよね。これはテーマですよ。

緒花達自身は先が見えないまま我武者羅に突っ走ていて、我々はそれを美しいと感じて、感動するんです。

 

ですが、そこに俺が飛び込めないのは、どうしてもこの『花咲くいろは』という作品が輝いてるからなんじゃないかと。

言ってみれば、この作り手が込めた力によって、緒花達は辿り着く場所は保証されている、そのように錯覚できるんです。TVラストがあるからこそ、そう思うのでしょう。

岡田さんの言う『どこか』は、『どこか(不明)』じゃなくて、『どこか(確定)』みたいな感覚です。

 

羨んでるわけでも、不安になっているわけでもないんです。でも、その作り手が見せる錯覚に、無我夢中になることはできないんです。

 

思うに、結局自分は『ぼんぼり方』知らないのではないかな……、そういうふうにも思いました。『花咲くいろは』という作品は、ぼんぼる少女たちの姿を描いても、ぼんぼり方は教えてくれなかったんじゃないかと。

 

当然といえば当然のことでした。「お前たち全員に輝く場所を用意する」なんて傲慢な作り手がいれば、まあそれはそれでカリスマありそうですが、そういうタイプの人間が作ってい出来るタイトルではありませんね。

 

書いてみて思ったんですが、この文章の主成分は僻みなんです。緒花や作品に対しての。勝手に走って輝きやがって、みたいな。

 

アニメに頼るなという、わりと甘えさせてくれない作品だったのかもしれません。

 

タイミング合えば、ぼんぼり祭り行こうと思ってます。

 

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